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The Dawn of Japanese Wine

Author

JOUKEI編集部

Published

May 24, 2026

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Tracing the history of Japanese wine, what first comes into view is not "Japaneseness," but a strong yearning for the West. The Meiji Restoration. Westernization. An era when all of Japan was rapidly modernizing.

日本ワインの歴史を辿っていくと、 最初に見えてくるのは、 「日本らしさ」ではなく、 むしろ西洋への強い憧れだった。 明治維新。 文明開化。 日本という国全体が、 急速に西洋化へ向かっていた時代。 鉄道。 建築。 軍事。 服装。 食文化。 あらゆるものが、 「近代化」という言葉の中で変わっていった。 ワインもまた、 その流れの中にあった。

今では、
日本ワインという言葉から、
風土や土地性を思い浮かべる人も多いかもしれない。
けれど始まりは、
もっと切実だった。
追いつかなければならなかった。
西洋列強に。
近代国家として。
当時の日本には、
そうした強い空気があった。

明治政府は、 西洋文化を積極的に取り入れていく。 牛肉を食べる。 洋服を着る。 社交文化を学ぶ。 鹿鳴館の時代。 ワインもまた、 「文明」の象徴だった。 つまり日本ワインの始まりには、 純粋な嗜好品というより、 国家的な近代化の文脈がある。

日本で本格的に葡萄酒づくりが始まった場所として、
最も象徴的なのが山梨・勝沼である。
現在でも日本ワインの中心地の一つだが、
もともと勝沼では、
古くから甲州葡萄の栽培が行われていた。
ただし当時の主目的は、
ワインではなく生食用だった。
甲州種は、
高温多湿な日本の環境に適応していた。
厚い果皮。
病気への耐性。
棚栽培との相性。
欧州系品種とは異なる進化をしてきた葡萄だった。

1877年。 山梨県令・藤村紫朗の支援を受け、 土屋龍憲と高野正誠はフランスへ渡る。 本場の醸造技術を学ぶためだった。 まだ日本には、 本格的なワイン醸造技術はほとんど存在していなかった。 だから彼らは、 「本場」へ向かった。 この出来事は、 日本ワイン史において象徴的だと思う。 日本ワインは、 最初から"日本独自"を目指して始まったわけではない。 むしろ、 フランスへ近づこうとして始まった。

しかし、
現実は簡単ではなかった。
日本とヨーロッパは、
風土がまるで違う。
雨。
湿度。
病害。
台風。
特にベト病や晩腐病など、
日本特有の高湿度環境による病害は深刻だった。
ヨーロッパでは成立する栽培方法が、
日本では成立しない。
同じ葡萄でも、
同じ味にはならない。
土地が違えば、
自然の振る舞いそのものが違った。

だから日本の作り手たちは、
ずっと葛藤してきた。
西洋を目指すべきなのか。
それとも、
日本という土地に向き合うべきなのか。
長い間、
日本ワインは"未熟"だと言われ続けてきた。
薄い。
酸が高い。
軽い。
世界基準から見れば、
そう評価されることも多かった。
だからこそ、
当時の作り手たちは必死だった。
技術を学び。
設備を整え。
欧州品種を植える。
世界に追いつこうとしていた。

けれど今振り返ると、 その"違い"こそが、 日本ワインの個性になっていったようにも思う。 甲州の繊細さ。 湿度が生む柔らかな香り。 出汁のような旨味。 軽やかな酸。 それらはかつて、 「世界基準ではない」とされたものだった。 しかし今、 世界中のワインシーンが多様性へ向かう中で、 その繊細さが再評価され始めている。

日本ワインの歴史は、 単純な成功物語ではない。 むしろ、 「この土地でワインを作るとは何か」を問い続けてきた歴史だった。 西洋への憧れから始まり。 模倣を繰り返し。 失敗し。 葛藤し。 そして少しずつ、 自分たちの土地を見始める。 日本ワインは、 最初から日本ワインだったわけではない。 長い時間をかけて、 少しずつ"日本"になっていった。

今、日本各地で新しいワイナリーが生まれている。 北海道。 東北。 長野。 岡山。 九州。 そこには、 かつてのような「西洋へ追いつく」という感覚だけではなく、 「この土地だから生まれる味とは何か」 を探ろうとする視点がある。 その流れの原点には、 明治時代の小さな挑戦があった。 勝沼の葡萄畑から始まった、 まだ名前も定まっていなかった文化。 日本ワインの歴史は、 今もまだ、 続いている。

参考文献

  • 『日本葡萄酒技術史』麻井宇介
  • 『日本ワイン 誕生と奇跡』山本博
  • 『日本ワインの教科書』山本博
  • 山梨県ワイン酒造組合資料
  • 国税庁 日本ワイン関連資料
  • メルシャン ワイン資料館