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風土は、まだ醸され続けている

未完成であることが魅力、日本ワインの今と、JOUKEIが記録したいもの

著者

JOUKEI編集部

公開日

2026年5月30日

philosophyjoukeijapanese-wineterroirculture

日本ワインは、まだ若い文化だと思う。けれど、だからこそ面白い。まだ決まりきっていない。まだ揺れている。まだ変わり続けている。その"未完成さ"そのものが、今の日本ワインの魅力なのかもしれない。

日本ワインは、
まだ若い文化だと思う。
ボルドーのように、
何百年も続く格付けがあるわけではない。
ブルゴーニュのように、
土地ごとの価値が細かく定義されているわけでもない。
イタリアのように、
生活文化の中へ深く根付いているわけでもない。
日本ワインは今も、
発展の途中にある。

けれど、
だからこそ面白い。
まだ決まりきっていない。
まだ揺れている。
まだ変わり続けている。
その"未完成さ"そのものが、
今の日本ワインの魅力なのかもしれない。

実際、
日本ワインには今も、
様々な価値観が混在している。
クラシック。
自然派。
欧州品種。
日本固有品種。
大規模生産。
小規模生産。
樽熟成。
アンフォラ。
科学。
感覚。
そのどれか一つが正しいわけではない。
むしろ、
様々な思想が同時に存在している。

そしてその背景には、
日本という土地そのものの複雑さがある。
南北に長い地形。
火山帯。
湿度。
台風。
雪。
急峻な山々。
豊富な水。
同じ国の中でも、
風土が大きく異なる。
だから日本ワインには、
一つの"正解"が存在しにくい。

北海道には、
北の冷気がある。
山梨には、
盆地の光がある。
長野には、
標高が生む緊張感がある。
東北には、
静かな寒さがある。
岡山には、
温暖な穏やかさがある。
九州には、
雨と生命力がある。
土地が違えば、
ワインも変わる。
そしてその違いを、
ようやく"個性"として受け止め始めている。

また、
日本ワインは今もなお、
自然の厳しさと向き合い続けている。
病害。
高温多湿。
台風。
霜。
豪雨。
気候変動。
毎年同じようにはいかない。
むしろ、
思い通りにならないことの方が多い。

だからこそ、
日本ワインにはどこか、
"自然に作らされている"
ような感覚がある。
人間が完全に支配しているというより、
自然に支えられながら、
なんとか成立している。
その不安定さも含めて、
日本ワインの風景なのだと思う。

そして今、
世界の価値観も少しずつ変わり始めている。
かつては、
濃いこと。
強いこと。
高得点であること。
完璧であること。
そうした価値が強かった。
けれど現在は、
もっと小さなものへ視線が向き始めている。
土地性。
透明感。
農。
発酵。
作り手の思想。
地域文化。
均一ではないもの。
揺らぐもの。
そうした価値観と、
日本ワインはどこか深い場所で繋がり始めている。

もちろん、
日本ワインはまだ小さい。
生産量も少ない。
価格も高くなりやすい。
安定もしない。
海外の巨大産地と比べれば、
まだまだ未成熟だと思う。
けれど、
その若さには可能性がある。
固定されていないからこそ、
まだ変われる。
まだ更新できる。
まだ新しい文化を作れる。

そして今、
全国で新しい畑が生まれている。
新しい作り手たちが、
土地へ入っている。
彼らの多くは、
単にワインを作りたいだけではない。
この土地で生きたい。
自然と関わりたい。
農をしたい。
土地の文化を残したい。
そうした感覚と共に、
ワインへ向かっているように見える。

日本ワインは、
まだ完成していない。
だからこそ、
今も変わり続けている。
それは弱さでもあり、
同時に大きな魅力でもあると思う。

ワインは、
単なる嗜好品ではない。
土地の記憶であり、
人の営みであり、
文化の発酵でもある。
そして日本ワインは今、
この土地の風景を、
少しずつ自分たちの言葉で語り始めている。

JOUKEIは、
その景色を記録していきたいと思っている。
完成された物語としてではなく、
今も醸され続けている文化として。
土地と人が積み重ねている時間を、
静かに残していくために。

風土は、
まだ醸され続けている。
日本ワインの物語は、
まだ途中にある。

参考文献

  • 『日本ワイン 誕生と奇跡』山本博
  • 『ウスケボーイズ』河合香織
  • 『日本ワインの教科書』山本博
  • 各ワイナリー公開インタビュー
  • 日本ワイナリー協会資料
  • 国税庁 日本ワイン関連資料